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「下請法」が生まれ変わります ― 2026年1月から新ルールへ

来年1月1日から、私たちの取引のあり方を大きく変える法律が施行されます。
これまで「下請代金支払遅延等防止法」と呼ばれてきた下請法が改正され、新しい名前は 「中小受託取引適正化法(取適法)」 になります。
名前は変わっても目的は同じ。中小企業が不利な立場に立たされないように、取引の公正さを守ることです。
ただし、内容は従来よりも一歩踏み込んでおり、すべての業界に関わるテーマとなっています。

改正のポイントを一言で言うと?
まずは 「言葉の整理」
「親事業者」「下請事業者」という呼び方が、「委託事業者」「中小受託事業者」に変わります。(新第2条第8項、第9項関係)近時下請けという言葉自体が使われなくなってきていることなどから、表現が変更されることになりました。

次に 「対象の拡大」
・運送の再委託だけでなく、部品メーカーや卸売業者等は、荷主による運送の委託も法律の対象になります。(新第2条第5項、第6項関係)物流業界以外の業界も直接関わるようになったのです。

・これまで資本金基準で対象外だった企業も、「従業員数基準」が新設されたことで、従業員数300人超(一部の委託取引は100人超)の事業者は新たにルールの対象になる可能性があります。(新第2条第8項、第9項関係)

そして実務上もっとも大きいのが、

  • 価格協議をきちんと行うことが義務になる (新第5条第2項第4号関係)

  • 手形払いが禁止になる (新第5条第1項第2号関係)

この2点です。
原材料や人件費が上がっているのに「価格は据え置きで」と協議に応じず、押し切ることは、改正後は法律違反にあたります。また、代金の支払いはスピードと確実性が求められるため、手形払いは使えなくなります。
 


実際の取引で想定される場面を見てみましょう。

  • 事例1:製造業A社
    A社は取引先から「原材料費が上がっているから単価を上げたい」と要望を受けました。改正前は「契約上こちらが決めるから」と一方的に拒否していましたが、改正後は協議に応じる義務があります。応じなければ違法行為となる可能性があります。

  • 事例2:部品メーカーB社
    部品メーカーである荷主B社は、これまで運送事業者に手形で代金を支払っていました。改正後は手形払いが禁止されるため、現金振込に切り替えなければなりません。支払条件を見直す必要があります。

  • 事例3:中堅企業C社
    C社は従業員320名ですが、資本金基準に該当しないことから、従来は規制対象外でした。しかし新たな基準では適用対象に入る可能性があり、契約書や支払条件の点検が求められます。

 


今から取り組むべきこと
では、私たちは何を準備すべきでしょうか?

例えば、

  • 価格交渉に応じた記録や証拠を残す

  • 手形ではなく現金払いや振込に切り替える

  • 運送委託を行っている企業は、契約書の見直しが必要な場合がある

  • 自社と取引先の従業員数区分を再確認する

  • 改正についての社内情報共有(15分だけの研修でも効果的です。)

などが必要です。

 

 

最後に

一点補足すると、本改正については、「改正下請代金支払遅延等防止法」(改正下請法)とも記載されますが、この法律は2026年1月1日施行予定で、正式名称が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称:中小受託取引適正化法、通称:取適法)に変更されます。一般的には「改正下請法」という通称が使われることが多いですが、正式名称の変更についても念頭に置いておくと良いでしょう。


改正取適法は、単に「規制が厳しくなる」だけではありません。
公正な取引を通じて、お互いが安心して長く付き合える関係をつくることがゴールです。
来年1月まであとわずか。今のうちに準備を整えれば、自社の信頼性はむしろ高まります。
この機会に、取引のあり方をもう一度見直してみてはいかがでしょうか。
契約書レビューや価格交渉の社内体制づくりなど、実務に即したアドバイス。気になる点やご不明な点があればお気軽にご相談ください。

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